デイリーレポート(2022年4月21日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

本日は今朝の放送で話した台本をお送りします。

*ファンダメンタル
3月期末に向けて実施された日銀指し値オペ以降、日米の金融政策方向性の違いからドル買い・円売りの方向性が確定した流れです。その後財務省からは市場を注視する、円安のスピードが速いといった牽制発言が出ていましたが、黒田日銀総裁はつい最近まで円安容認発言を続けてきたことで、止まらない円安の流れを作ってしまったと言えます。

市場参加者も押し目でのドル買いを狙うものの押し目待ちに押し目無しの状態が続いていますし、輸入業者のドル買い予約も出遅れていると言えます。物の価格が上昇している上に円安という悪循環が続いていることを考えると今後も円安の流れは続かざるを得ないと言えます。

昨日東京市場前場には一時129.41レベルと20年ぶりの円安水準をさらに更新し130円の大台を視野に入れ始めました。しかし、東京昼前からは急速に水準を下げ、ワシントンで開かれるG20を前にしたポジション調整が入ったと見られます。本日には日米財務相会談が開催され、当然為替も主要テーマになると見られますが、ここでどのような話となるのか次第となってきました。

つまり円買い・ドル売り介入の有無ですが、主要国では為替レートは市場に任せるという見方が主流であること、日本に比べてインフレが急速に進んでいる米国にとってドル高は輸入物価を抑える効果もあることから、為替介入については否定的にならざるを得ないでしょう。

そうしたことから財務省会談前後に押し目があるのであれば、下がっても再び上がり始めても、どちらでもドル買いというスタンスが良いと考えています。

*ポジション
シカゴの通貨先物のポジションでは円売りポジションが11万枚を超え2018年9月以来の水準に増えてきました。最近は11〜13万枚程度まで増えるとポジションが減る傾向が多いものの、ポジションが減っても必ずしもドル安に戻っているわけではありません。

現状は日米金利差拡大というファンダメンタル要因が今後も続くということが確定している以上、あまり参考にする必要は無いように思います。

*テクニカル
ドル円は2015年高値125.86レベルを上抜けたことでテクニカルにも円安の流れが確定してしまったと言えます。20年前の2002年1月高値が135.18レベルであったことを考えると、今後130円、135円と円安が進んでいく可能性は高いでしょう。

またドル円の年間レンジは8〜10円程度か20〜25円程度かという膠着もしくは荒れ模様という動きが近年の傾向で、後者の場合22円程度が平均的な値幅です。2022年の年初来安値が113円台半ば、仮に22円を加えると135円台半ばと2002年高値に一致することも偶然とは思えません。

*結論
本日の日米財務相会談で為替介入の合意を取り付ける可能性は限りなく低く、130〜135円をターゲットに押し目買いを考えたいところです。

*余談
最後の円買いドル売り介入は1998年6月、アジア通貨危機などもあってドル高トレンドが強まっていた時ですが、介入をしても下がらなかったドルは8月17日のロシアデフォルトをきっかけに急反転していくこととなりました。

今回介入があるとロシアがデフォルトしその後ドル安という歴史を繰り返すかもしれないななどという妄想もあります。



配信日:2022年4月21日