デイリーレポート(2023年10月26日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

本日、朝の放送で話した内容に代えさせていただきます。

*ファンダメンタル
 今夜のECB理事会から始まり、日銀会合、FOMCと1週間の金融政策ウィークを控えて積極的に動きにくい時期となってきましたが、ECB理事会とFOMCは現状維持がコンセンサス、会見に注目が集まります。前回会合からの変化はハマスによるイスラエル攻撃に始まった中東情勢の変化です。

原油価格の上昇はインフレ高止まりの要因となる一方で、情勢悪化が世界的な景気悪化の材料にもなるであろうことを考えると、ECBもFRBも前回利上げが最後で現在の水準を来年のいつまで続けるのかという点が今後の注目材料となるでしょう。インフレが高止まりしているとは言っても高金利状態が続くことで来年どこかで緩和に転じる可能性が高く、中期的にはそのタイミングを見る方向へと動いていきます。

いっぽうで日銀会合は見方が分かれていて世界的な金利上昇の動きから10年債利回りが0.88%台まで上昇したことで日銀がYCCの修正に動く可能性も指摘されています。現状では買いオペで金利上昇を抑えているものの、思いの外早く上限1.0%が視野に入ってきた印象です。日銀が動くのか、動かないのか、150円の大台に乗せてきたこともあって、この点が今後一週間の最大の注目材料となりそうです。

個人的には7月に変動幅を広げた際に為替のボラティリティ低下も意図していたことを考えると、150円に乗せてしまった動きを受け、日銀はYCCの変動幅拡大、財務省は介入という動きは十分に考えられることです。日銀はどこかの段階でYCC自体を撤廃する流れにあると思いますが、早ければ来週の会合で実施されるのではないでしょうか。

*ポジション
 シカゴの通貨先物のポジションは10月3日の小規模介入と思われた動き以降若干円売りポジションが減り、現在は10万枚前後の水準がここ2週間ほど続いています。それでも十分に円売りが積まれていることはたしかですから、日銀会合を前に多少のポジション解消が起きるのではないかと見ています。

*テクニカル
 ドル円は先週以降149.99レベルが高値という介入警戒感が現れている流れが続きましたが、昨夜米金利上昇とともに150円台に乗せ、10月3日高値を上回ると150.32レベルまで上昇しました。

テクニカルには昨年高値の151.95レベルまでレジスタンスは無いのですが、心理的に日銀会合を控えての150円台乗せということで、150円台半ばを超えての円安はこの1週間は警戒感が極度に高まると見られます。

*結論
 最近の大きな動きは常に円高ということを考えると、ここから1円動くなら円高としか思えませんので、いったん150円台前半でドルの打診売りをしてみるのは悪くないと思います。ただ、安易な介入期待はすべきではないと思いますので、150円台後半に入ったら潔く諦める、週末前には閉じるといったリスク管理を伴ったドル売りであればリスクは低いでしょう。

タイミング的に歯切れが悪いですが、個人的には日銀の政策修正思惑が強まり、円高に動く可能性を考えています。



配信日:2023年10月26日