デイリーレポート(2023年3月13日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

ドル円は3月FOMCで0.5%利上げを織り込みつつもそれまでの数字次第との議会証言で雇用統計の注目度は上がっていましたが、特にサプライズは無いであろうとの思惑からNY市場までじり高の展開を辿りました。雇用統計はNFPは予想より強かったものの失業率が弱かったことから引き締め思惑がやや後退し、金利低下、ドル売りの動きとなりました。またシリコンバレー銀行の経営難(その後破綻を発表)が株安材料となったこともドルの上値を抑え134.11レベルまで下げた後に135円台を回復して引けました。

ユーロドルはNY市場まで1.05台後半の狭い値幅でのもみあいが続いていましたが、雇用統計をきっかけとしたドル売りの動きから1.0701レベルまで上昇。引けにかけては米金利がやや戻す動きとなったことから、ドル買いの動きから1.06台前半へと押して引けました。

この週末はシリコンバレー銀行の破綻という多くの市場参加者が想定していなかったリスクオフ材料が飛び出しましたが、金融機関の多くが米債に投資し、FRBによる急速な引き締めが債券市場でも債券価格下落(金利上昇)となり、直接的なきっかけはFRBの引き締めに対応したリスク管理ができていなかったという点です。

FTX破綻から始まった連鎖破綻という捉え方も出来ますが、そもそも昨年3月から始まったFRBの利上げは徐々にターミナルレート上昇とともに、債券市場への影響も着実に拡大してきました。昨年7月からは長短利回りの逆転など、ここに至るまでの金利市場の変化に対して多くの金融機関は対応してきたはずですが、同様の財務体質となっている金融機関は米国内外にまだまだありそうです。

週末に財務省、FRB、FDIC(預金保険公社)がFDICによる問題解決を承認したことで週末前よりも不安は落ち着いているようですが、全ての預金者を保護するいっぽうで、破綻による損失を納税者が負担することはないとも言っています。声明文によれば資金源は金融機関から回収されるとしていますが、金融機関のコスト上昇という点で間接的には米国民の負担にはなるでしょう。

米国当局は今後出てくる可能性のある金融機関の破綻にも対応するでしょうが、3月の利上げ幅縮小も含めて今後の金融政策の変化、さらには景気後退リスクといった懸念材料は今後細かく検討していく必要があるでしょう。



配信日:2023年3月13日