デイリーレポート(2022年11月24日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

本日は今朝のラジオ日経番組用に書いた中期の方向性についてをモーニングレポートの代わりとさせていただきます。

注目通貨ペア 「ドル円の売り」

日米の祝日が続くことから、今回は短期的な見通しよりも若干長い目で見た話をさせていただきます。

*ファンダメンタル
前回出演が10月20日でしたから、その翌21日に151.94レベルと年初来高値を更新し、過去最大の為替介入を見ることとなりました。また11月10日には米国CPIが予想よりも弱い7.7%となったことで、介入時よりも大きな値幅を伴う円買いを見ています。為替介入と米国インフレの2つが現在の円相場で大きな要因となっていることから本日は、この2点について思うところから入ります。

(1)為替介入
9月22日の介入から10月の介入まで約9兆円が使われましたが、ほぼ1か月の間に投入された金額を考えるとかなりの規模で、短期的には効果が出るべくして出たと考えられます。しかし介入自体がトレンドがある時に出てくるものですから、現在の日米金利差拡大傾向が続く限り、ドル円は押し目ではドル買いが出てくるということも事実です。実際に財務省はそのあたりも見越してでしょうが、10月にも米国債を434億ドル売却しました。介入規模的には大規模介入2回は実施できるぞという意思表示にも思えました。

(2)米国のインフレ率
その後の大きな変化が米国のインフレ率低下です。10月総合CPIは前年比で8.0%の予想に対して7.7%となり、146円台から140円台まで7つの大台変化を見ることとなりました。その週の週間レンジは9円を超えましたが、これはリーマンショック以来の週間レンジとなります。インフレ率は数字のマジックでもありますが、前年比で比べると年明け以降は急速に低下傾向を見ることは確実ですから、インフレ率もピークアウトしたと言えます。

この2つで、年内のドル円最高値は151.94レベルでほぼ確定したこととなりますが、まだまだ米国のインフレ率は絶対的な水準も高く日米金利差も拡大方向ですが、市場参加者は次のテーマとして既にその先の緩和への転換であるとか、米国議会のねじれであるとか悪材料を見つける段階にあるようです。こうした動きが、年内のドル円は戻り売りを考えるべき状況にしています。

*ポジション
シカゴの通貨先物のポジションでは着実に円売りポジションが減少してはいるものの、11月15日時点ではまだ約6万6千枚の円売越しです。その後も円高方向へと動いていることを考えると今後も減少方向に向かうことになるでしょう。
また、先日の日経新聞に円だけで無く通貨先物全体としてのドルポジションについて集計したグラフが出ていましたが、2週間ほど前からドル売りに転じてきたとのことです。このこともこらまでドル買い一辺倒だった動きに大きな変化が出始めていることを示していると言えそうです。

*テクニカル
テクニカルには年初来安値113.48と高値151.94との38.2%押しが137.25と11月安値137.66とほぼ一致しましたが、その後142円台前半までの戻しを挟んで昨日には139円台前半へと水準を切り下げてきました。
地合い的にも着実にドルの上根が重たくなったきていることを考えると、11月安値の再トライは意外と早いタイミングで見ることになるのではないかと思います。
次のターゲットは半値押しの132.71ですが面白い数字を紹介すると2022年の出来高概算で最も出来高が多かったのが135円前後です。出来高分析的には同水準まで押すことも考えるべきで、今後同水準をターゲットに135〜140円のレンジになっていく可能性が高いのではないかと見ています。

*結論
米ドル最強、日本円最弱の流れに明らかな変化が見えた1か月となりましたが、当面は140円を超える水準での戻り売りを考え、135円台での買い戻しという中期的な戦略を提示したいと思います。



配信日:2022年11月24日