デイリーレポート(2022年9月9日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

ドル円は終日144円を挟んで方向感が出ませんでしたが、東京後場には財務省、金融庁、日銀による円安対応への三者会談が開かれることを警戒した円買戻の動きが見られました。NY市場前には143.32レベルまで水準を下げていましたが、NY市場ではパウエル議長が改めて引き締めの長期化について言及したことから144.44レベルまで買い戻され、その後は引けまで144円近辺でのもみあいとなりました。

ユーロドルはECB理事会を前にしてパリティ前後でのもみあいを続けていましたが、ECB理事会でコンセンサス通りの0.75%利上げが発表され1.0030レベルの高値をつけました。しかし、イベント通過で利食い売りも出る中でラガルド総裁が会見で引き締めは今回も含めて2回より多く5回より少ない、0.75%は標準ではないと発言したことで0.9931レベルまで売りが広がりました。その後別のECB関係者が次回も0.75%の可能性はあるとの発言に引けにかけては買い戻しが目立ちパリティに近づいての引けとなりました。

一連のイベントが終わり週末前のポジション調整が中心となりそうですが、ドル円は145円をトライし切れなかったことによる戻り売りと下がったところで買いを考える向きとの綱引き状態が続きそうです。ただ三者会談で円安への警戒感を日本が高めたとしても、インフレ率が高く輸入物価を抑えるためドル高を歓迎する米国が介入を認めることはないでしょう。

そうなると開発途上国が行うような外貨持高規制でも導入するしか方法は無いのではと思います。日本でも1998年の外為法改正までは残っていた規制で、1980年代には円転規制として当局は外貨売りに目を光らせていたものです。仮に銀行の外貨買いに規制をかけると顧客へも当然波及しFX業者の背後にいる個人投資家にも影響します。ただ、自由化した為替の規制を元に戻すようなことは避けるべきと考えるでしょうから、そうなるとこれも難しそうで、即効性のある手立ては無いというところでしょう。

本日は週末前ということで基本的にはこれまでの調整からドルが売られやすい流れになるものと見られますが、ユーロ円が年初来高値更新の動きから、ユーロは底堅い展開となりそうです。
 ドル円  143.00〜144.20
 ユーロ  0.9980〜1.0080
 ユーロ円 143.70〜144.80



配信日:2022年9月9日