デイリーレポート(2022年6月30日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

本日も本文のみとなります。

ドル円は東京市場では前日の高値圏でもみあいを続けていましたが、欧州市場に入り目立った材料も無い中で前日高値を上抜けると買い仕掛けと見られる動きが強まりました。前日に続いて月末実需のドル買いも入っていたと見られます。ECB年次フォーラム最終日のパウエル議長講演ではインフレを抑える発言が7月0.75%利上げを意識させ一時137.00レベルと年初来高値を更新、引けにかけてはやや押して引けました。

ユーロドルは東京後場に一時的な押しは入ったもののNY市場までは1.05台前半でのもみあいを続けました。NY市場では全般的なドル買いの動きから先週安値を下回るとストップオーダーも巻き込みながら1.0435レベルまで下落、その後も安値圏でもみあいのまま引けています。

本日は今朝の放送で話したユーロドル下目線の見通しについてまとめておきます。

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注目通貨ペア 「ユーロドルの売り」

今回は四半期末を控えてどのような動きが出るのかにもよるので、今日明日ではなく今後1週間から10日程度の期間で考えます。ちなみに市場の噂ではドル買いの実需が出るのではと言われています。

*ファンダメンタル
世界的にインフレ懸念は増大していますが、欧州のCPIの伸びを見ていると(1月5.1%→5月8.1%)、一時期の米国のCPI上昇を後追いしているように見えます。
ECBも想定以上のインフレに対応し、7月から利上げ開始、9月にはゼロ金利〜若干のプラス金利という動きが確実視されています。利上げに動くという点では一時期のユーロ買いの動きは正しいものの、FRBは7月0.75%、9月0.5%の利上げを織り込んでいて、米欧の金利差という点では拡大方向です。
またイタリアの長期金利上昇を受けPEPPの再投資を行う政策は若干ではあるものの当初よりもハト派的と見る向きが多いようです。
さらに今後の欧州は景気減速下での利上げとスタグフレーション懸念が現実のものとなる可能性が高く、対ロシア経済制裁も欧州の足を引っ張っる状況が続く大きな要因となっています。

*ポジション
シカゴの通貨先物のポジションでは6月7日時点までユーロ買いでしたが、14日時点でユーロ売りに転じました。5月3日時点のように一時的現象で終わる可能性もありますが、今回は一定期間継続する可能性のほうが高いと見ています。

*テクニカル
ユーロドルは2月初めの年初来高値1.1495レベル以降高値安値ともに切り下げる展開が続いていましたが、5月の年初来安値1.1349レベルで2017年安値1.0340レベルまで残り9pipsまで迫って抜けられなかったこともあって、その後は収束気味のもみあいが続いています。

しかし昨日の全般的なドル買いの動きから1.04台前半へと改めてユーロドルが水準を下げてきていることから、早晩2017年安値を改めて試しにいく展開になる可能性は高そうです。

*結論
四半期末の実需が予想通りドル買いで入れば本日のロンドンフィキシングでユーロドルは一段安になる可能性がありますが、仮にそうで無い場合でも戻り売りが出やすい地合いは今後も続くと見られます。

7月上旬にも2017年安値をトライし、全般的なドル高地合いの中でパリティ(1ユーロ1ドル)をターゲットとする流れになってくるのではないかと考えています。
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配信日:2022年6月30日