デイリーレポート(2023年6月29日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

本日、朝の放送で話した内容に変えさせていただきます。

*ファンダメンタル
 6月の一連の金融政策イベントが終わってからは素直に金融政策の方向性の違いから円独歩安の展開が続きます。ドル円では当局の牽制発言もあり積極的な円売りはやや手控えられている感じですが、クロス円での牽制は通常ありませんので、ユーロ円やスイス円など対欧州通貨での円売りが目立ちました。

ユーロ円はリーマンショック前の水準に戻しましたし、スイス円は1979年高値を超え史上最高値を更新するといった具合で、金利差から主要通貨では円のみが売られてきました。しかし、クロス円での円売りがそれなりに積み増されてきた中で、当局の発言も徐々にトーンが強まってきている様子です。

三者会談、鈴木財務相による牽制発言までは若干トーンが弱い印象でしたが、今週の神田財務官の発言はトーンが強まってきて、警戒水域に近づきつつあるという印象を与えました。おそらく145円よりも円安水準はレートチェック、動き次第では介入といった動きも出てくる可能性ありと言えそうです。

*ポジション
 シカゴの通貨先物のポジションは直近で107,655枚の円売りとなっていて、昨年秋の売りポジションを超えかなり高水準の円売りとなっています。過去10年間では14万枚程度の円売りポジションもありましたが一時的で、売られすぎ状態であることは間違いありません。世界的に円売りが膨らんでいると言えます。

*日柄
 日柄的には7月1〜3日頃は地合いが変化しやすい時間帯となります。為替だけでなく、株式市場や商品市場を中心とした変化が起きやすいのですが、ドル円の円安進行も大きく速いことを考えると、今週末から来週初あたりにいったん短期的な調整を挟みやすいと言えます。

*テクニカル
 昨年介入後の戻り高値は11月の142.25レベルでしたが、同水準を抜けたことでテクニカルにも円安が加速したと考えられます。現在のターゲットは節目となる145円ですが、数として144という数字は節目となりやすいこともあり、144〜145円でいったん折り返す可能性は高そうです。ただ昨年11月高値が現在はサポートとなりますので、142.25〜145.00が当面のレンジとなり、現状は上限に近いことから週末前に調整が入りやすいと考えています。

*結論
 大きな流れは円安であるものの、当局からの発言やポジションの増加を考えると145円を前に一旦調整が入りやすく144円台半ばでのドル円の売りはワークしやすいと言えるでしょう。



配信日:2023年6月29日