デイリーレポート(2022年7月28日配信)

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WRITER 山中康司
代表理事
金融リテラシー協会は、日本の金融立国化に貢献し、日本の新たな未来を創造するために設立された協会です。 詐欺にあわない知識、お金を活かすための知識、ふたつの知識の普及・啓発を行い、国民生活の向上と日本経済の発展に貢献し、金融経済教育の分...

今朝は通常のレポートに代えて朝の放送で話した台本をお送りします。

注目通貨ペア 「ドル円の売り」

*ファンダメンタル

昨日は注目のFOMCが開かれ事前予想通り0.75%の利上げを行い、誘導目標は2.25〜2.50%となりました。予想通りだったものの各金融市場は異なった反応を見せています。

株式市場は予想通りであったこと、9月以降の利上げペースが緩まるあろうことを期待して上昇しましたが、為替市場は短期債利回りが急低下(2年最利回りは3.10%台から2.96%台へ)したことを見てのドル売りとなりました。先週後半あたりから米金利と為替市場の相関は高くなってきていると言えます。

今回の利上げと今後の利上げをどう考えるかですが、3月の初回利上げから考えるとわずか5か月の間に2.25%もの利上げを行い、景気後退リスクを取ってもインフレ退治を優先する姿勢を鮮明にしています。景気後退リスクも先週のサービス業PMIなど経済指標を見る限り、米国でも気にすべき状況となっています。

今後も利上げペースは緩まっても利上げが継続されることから、景気後退リスクは高まる方向でしょうが、金利市場参加者の見通しもそうした懸念を明確に示しています。

FF先物のピークは以前は4〜4.25%ということもありましたが、現在は3.25

〜3.5%がピークとなる前提で取引されていて、しかもそのピークを迎えるのは今年12月のFOMCという見方です。つまり引き締めはあと3回で終わることとなり、9月11月12月の利上げ幅は0.5、0.25、0.25%がコンセンサスです。さらにこのピークが続くのは来年前半まで、年後半には緩和に転じるという見方が既にコンセンサスです。

当面は米金利上昇は続くものの、常に景気後退リスクと隣り合わせであることから、為替市場ではこれまで一人勝ちだった米ドルのポジション調整が、ここ2週間ほど先行して進み、昨夜のFOMCでサプライズが無くイベントを通過したことで改めてポジション調整によるドル売り(円買い)が継続しやすい地合いにあると言えるでしょう。

*ポジション

シカゴの通貨先物のポジションではここ1か月ほど5〜6万枚の持ち高が続いていて、一時期のような円売りポジションは見られなくなりましたが、そうした中で値動きはドル安に動いてきていることを考えると、今後投機筋の円売りも減少する可能性がありそうです。

*テクニカル

ドル円は7月14日の年初来高値139.39レベルからの調整局面にあります。前回6月FOMC後の安値131.49レベルとのフィボナッチ・リトレースメントを見ると半値押しが135.44、61.8%押しが134.51となっていて、その間に135円の大台があることから短期的には135円程度までの押しが入りやすいと見られます。

高値からの逆N波動を想定したフィボナッチ・エクスパンションでは61.8%エクスパンションが135.10、78.6%エクスパンションが134.46となり、135円から134円台半ばと同様の水準を示していることがわかります。

*結論

イベント通過によりドル円はこれまでの高値からの調整を継続しやすい地合いが継続すると考えられます。時間的には今後1週間程度の期間で135円の大台をトライするという動きを見ておきたいところです。

*追記

放送終了後に急速に円高に動いてきました。本日中にも135円トライとなりそうです。



配信日:2022年7月28日